手法をコード化すると、見えるものが変わる

トレード手法を考えるとき、私はできるだけコード化できる部分を探すようにしています。ただし、ここでいうコード化は、エントリー判断をすべて機械に任せるという意味ではありません。

むしろ逆です。人間がエントリー判断をするために、必要な材料をコードで集める。そして、判断の前段階まで整理する。この感覚に近いです。

SSSフレームワークでは、シグナルをエントリー確定の答えとして扱いません。シグナルは、膨大なチャートの中から確認する価値のある候補を抽出するためのものです。その候補をどう見て、どう判断するかは、人間の役割として残ります。

エントリー判断を料理にたとえる

目の前に、美味しそうな料理があるとします。その料理が「エントリー判断」だとすれば、料理の原料へと遡ることが「コード化」だと思っています。

完成した料理だけを見て、「これは美味しそうだ」「これは良いエントリーに見える」と感じることはできます。しかし、その料理がなぜ美味しいのかを考えるには、使われている材料や調理の手順を見ていく必要があります。

どんな食材を使っているのか。どの順番で処理しているのか。どのくらい火を入れているのか。どこで味を調整しているのか。完成した料理の裏側には、必ず材料と工程があります。

トレード手法も同じです。良いエントリー判断の裏には、判断に必要な材料があります。それをできるだけ分解し、集められるものはコードで集めていく。これが、私にとってのコード化です。

コードは材料を集める

エントリー判断をするために欠かせない材料は、ある程度コードで集められます。たとえば、価格の位置、高値や安値、移動平均との距離、オシレーターの状態、直近の値動き、一定期間のボラティリティなどです。

こうしたものは、人間が毎回目で探すこともできます。しかし、コードで拾えるなら、コードに任せたほうが安定します。人間の目は便利ですが、気分や疲れによって見え方が変わります。同じチャートを見ているつもりでも、その日の集中力によって判断がぶれることがあります。

コード化すると、少なくとも材料を集める段階では、同じ条件で拾うことができます。これは大きいです。判断の材料を毎回同じ基準で集められるようになると、その後の裁量判断も比較しやすくなります。

材料だけでは料理にならない

ただし、ここで勘違いしてはいけないことがあります。材料を集めただけでは、美味しい料理にはなりません。肉、野菜、調味料を並べただけでは料理とは言えません。それらを適切に切り、炒め、蒸し、煮込み、味を調整して、初めて料理になります。

トレードでも同じです。条件を並べただけでは、エントリー判断にはなりません。RSIがこうなった。移動平均からこれだけ離れた。高値を更新した。安値を割った。ボラティリティがこのくらいある。こうした情報は大事です。

しかし、それらを単に積み重ねただけで、良い判断になるわけではありません。相場の文脈を見て、今の状態に意味があるのかを考える必要があります。コードは材料を集めることはできますが、その材料をどう解釈するかは別の問題です。

数字の調整は下ごしらえに近い

料理では、食材をそのまま使うことは少ないです。切り方を変える。下味をつける。余分な水分を抜く。火を通す順番を変える。少し寝かせる。こうした下ごしらえによって、料理の仕上がりは大きく変わります。

手法のコード化でも、これに近いことをします。期間を変える。閾値を調整する。対象にする時間足を変える。拾いすぎるなら条件を少し厳しくする。逆に、拾わなすぎるなら条件を緩める。これは完成した判断ではなく、判断しやすい状態を作るための調整です。

コード化する要素の数字を調整することは、料理で言えば下ごしらえに近いと思っています。目的は、数字をいじって都合の良い結果を作ることではありません。人間が判断しやすい状態まで、材料を整えることです。

最後に判断を完成させるのは人間

一定の手順に沿っていけば、料理の前段階までは作れます。材料を集める。下ごしらえをする。ある程度の形に整える。ここまではコード化できます。

しかし、最後に火加減を見るのは人間です。食材の状態を見るのも人間です。味を見て、微妙な調整をするのも人間です。トレードでも、ここが裁量判断にあたります。

コードで集めた材料を見て、今の相場で本当に判断対象としてふさわしいのか。このシグナルは入るべきものなのか。それとも見送るべきものなのか。そこを総合的に判断するのは、最終的にはトレーダーです。

SSSフレームワークでは、シグナルをエントリー確定の答えとして扱いません。シグナルは、判断に必要な材料を集めた結果として出てくるものです。そこから先に、人間の認識が入ります。

コード化すると、曖昧だった判断が見える

手法をコード化する意味は、単に自動化することではありません。むしろ、コード化してみることで、自分が何を見ていたのかが分かります。

なんとなく高いと思っていた。なんとなく行き過ぎだと思っていた。なんとなく反応しそうだと思っていた。その「なんとなく」を、できるだけ材料に分けてみます。

価格の位置なのか。直近の動きなのか。ボラティリティなのか。上位足の状態なのか。ローソク足の形なのか。シグナル化しようとすると、自分が見ていたものを一度分解する必要があります。

この作業によって、見えるものが変わります。チャートを見る目も変わります。自分の判断の中で、どこがコードに任せられて、どこが人間に残るのかも見えてきます。

コード化は、裁量を消すためではない

コード化というと、裁量をなくす方向に見えるかもしれません。しかし、私の考えでは少し違います。

コード化は、裁量を消すためではありません。裁量判断の前段階を整えるためのものです。必要な材料を集める。見るべき場面を絞る。判断対象をそろえる。検証しやすい形にする。そのうえで、人間が判断する。この流れにすることで、裁量判断を完全な感覚任せにしないで済みます。

料理で言えば、毎回その場の気分で材料を選ぶのではなく、まずは一定の材料と手順を用意する。そのうえで、最後の仕上げを人間が行う。これが、SSSフレームワークにおけるコード化の役割です。

見えるものが変わるから、検証できる

手法をコード化すると、最初は面倒です。感覚で見ていたものを分解しなければなりません。条件に落とし込む必要があります。実際にチャートへ表示してみると、思っていたものと違うシグナルが出ることもあります。

しかし、それが大事です。思っていたものと違うなら、どこが違うのかを見る。拾いすぎているなら、何を拾いすぎているのかを見る。拾えていないなら、何が足りないのかを見る。コード化すると、手法の輪郭が見えてきます。

完成した料理だけを見ていると分からなかったものが、材料や手順に分けることで見えるようになります。だから、手法をコード化すると、見えるものが変わります。そして、見えるものが変われば、検証できるようになります。

SSSフレームワークでは、まず優位性を組み立てます。そのためには、自分が何を見て、何を判断しているのかを分解する必要があります。コード化は、そのための有効な手段です。

自動売買を作るためだけではありません。裁量判断を、検証できる形に近づけるための作業です。

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